結論
田中吉政には凡人の10万倍の意欲能力があった。
なので成果報酬の業界に移籍した所、3石の足軽から30万石の大名に順当に出世した。
ただそれだけの話。
本朝立志伝
西国立志編(自助論)は名著であるが、登場人物が西洋人ばかりで、我が国の人間が学ぶにはややハードルがある。
その様な理由から、日本人にも理解出来るように「本朝立志伝」なる書籍を刊行しようと思い立った時期がある。
どこの出版社とも縁が無かったので封印していたが、先日「田中吉政らのライフハックについて書いて欲しい。」との要望が寄せられたので、当時(2012年前後?)書いた文章を公開する。
これも何かの縁なので、近いうちに刊行しても良いかも知れない。
田中吉政について
以下が、かつて書いた文章である。
当時の所見をそのまま伝えたいので、推敲せずに貼り付けておく。
【田中吉政】
近江の田中村に久兵衛と云う名の若い農夫が居た。
ある日、久兵衛が野良仕事を終えて休憩していると、数名の郎党を引き連れている侍を見かけた。
久兵衛はこの一団を見て、「侍でなければ人間ではないのだ」との感想を持ち(この時、何らかの一悶着があったのだろう)、帰宅するなり妻に離縁を申し渡した。
そして、自宅にあった米を全て炊かせて近隣の友人を招いて宴席を催し、自身の志を語ると村を後にした。
久兵衛は田中吉政と名乗り、前述の脇坂安治と同様に3石の雑兵から武家奉公を開始し、主家宮部家・主君豊臣秀次・親友石田三成を次々と踏み台にして、筑後一国32万石の大名にまでに成り上がる。
実に10万倍の大出世である。
人間が本気で何者かになろうと志し、脇目も振らずに上だけを目指せば何者にでもなれると云う話。
つまり結局何が言いたいかというと。
『世の中には〈能力や意欲が報酬に反映する環境〉と〈そうでない環境〉があり、現在の報酬が悪いのは貴方の所為ではなく単に業界形態がインセンティブ型ではないだけかも知れない。』
という話。
田中吉政の逸話を見る限り、この男は人格的への毀誉褒貶の激しさは兎に角として実に勤勉である。
生涯に渡って頭と身体を動かし続けている。
少なくとも。
「毎日領内を道端で弁当を食べながら領民や士卒の話を聞き取り回った。」
という逸話は凡庸な為政者では絶対に残し得ない性質のものである。
勿論、吉政の例は生存バイアスの最たるものだが、それでも。
「人より意欲能力の優った者が待遇に満足出来ないのであれば、インセンティブ型の業界に飛び込むべきである」
という話。
「全ての業務・業種・地域にインセンティブが発生すべき」
と主張する者も居るが、それは相対強者の論理である。
人間の99%は意欲能力の欠如した弱者なのだから、むしろ社会は成果概念があまり露骨でない分野を丁寧に掘り起こし、社会発展を妨げない範疇において活用してやらねばならない。
田中吉政の様な男など、10万人に一人も居ないのだから。
底辺様
いつもご親切にお答えいただき、本当にありがとうございます。
戦国武将を現代の働き方に落とし込む、底辺様の考察にいつも感銘を受けております。
ありがとうございました。
2019年10月14日 9:20 PM | ヤス |
新記事待ってました!
ありがとうございます
毎回楽しみにしています。
2019年10月15日 6:08 AM | 春 |
ヤス様
変動期の生き方は、変動期の事例からの方が学び易いのかも知れません。
機会があればまた一本書いてます。
2019年10月15日 12:05 PM | teihen |
春様
拙いエントリーで恐縮ですが、待っていて下さる方がおられるのは本当にありがたい事です。
2019年10月15日 12:05 PM | teihen |
過去エントリーで紹介されている自助論をオーディオブック化して愛読しています。
そろそろ更新されているかもしれないと偶然訪問したら本当に更新されていて嬉しい限りです。仰る様に自助論の登場人物は西洋人ばかりで日本人で紹介された書籍が欲しいと感じているところでした。
田中吉政と言う人物を知りませんでした。wikiで調べたところ僅かではありますが事績と人柄を窺い知る事ができました。大変興味深いです。
農家の出自から多岐に亘る活躍分野に驚かされます。キリスト教含め西洋の知識の学習したり、窯元を招請して陶業を興したり。自国化、事業の保有のヒントがあるように思えます。
明良洪範の三成に対する逸話から些か冷徹な面と狡猾性を垣間見れますが、吉政に象徴される三点:人格修養、能動性、学習意欲は現代の処世に通じそうです。
2019年10月16日 3:43 PM | 匿名 |
底辺さん、愛してます
2019年10月17日 3:25 PM | 太郎冠者 |
いつも更新楽しみにしております。
底辺様は言いたい事、書きたい事はブログに書き尽くしたと仰ってますが、底辺様のファンとしましては歴史ネタでも時事ネタでもなんでもいいので定期的に底辺節を聴かせていただきたいです。
2019年10月18日 3:38 AM | DROOG |
3:43様へ
西洋人の処世術は東洋に適応しにくい面もありますし、東洋人の処世術といっても印度人や漢人のものは日本人に適応しにくいです。
田中吉政という、ある意味極めて日本的な成功者からは、まだまだ学べる事が多いと思います。
2019年10月20日 6:18 PM | teihen |
太郎冠者様
ありがとうございます。
いつか愛される価値が身に付くように精進致します。
2019年10月20日 6:19 PM | teihen |
DROOG様
楽しみにして頂いてありがとうございます。
私の活動自体がネットからリアルに軸足を移しているので、思ったことを書き辛いというのが本音です。
ともあれ、折りを見てこちらの記事も増やしていく所存です。
2019年10月21日 10:59 AM | teihen |
話題が違うかもしれませんが、よくネットの年収ランキングでM&Aアドバイザリー企業の名が上がりますが、何故あんなに年収が高いのでしょうか。
インセンティブが凄かったりなんでしょうか。
お時間あるときにご回答頂けると嬉しいです。
2019年10月29日 10:57 AM | 匿名 |
10:57様
仕事には利益率や売り上げ高の高いものと、そうでないものがあります。
なので、蕎麦屋の様に売上高の上限が低い上に利率の悪い業界は賃金が安くなりますし、その対極の業界は賃金が高くなります。
2019年10月29日 2:03 PM | teihen |
ご回答ありがとうございました。
大変参考になりました。
売上や利益率の良い仕事に携わりたいものですね。
2019年10月29日 5:51 PM | 匿名 |