最近、経営側の方からの相談が重なったので、今回は人事に関するエントリー。
内容はタイトルそのままで、あなたが「高いコストを掛けて集めた従業員が瞬時に退職してしまう理由」とその対策についてである。
先に上記の2エントリーに目を通されてからの方が解り易いかも知れない。
どうして従業員はすぐに退職してしまうのか?
結論は簡単である。
貴方の部下が勝手に新入社員を辞めさせているからである。
「部下」と云うのは、あなたの奥様やお母様かも知れないし、管理職かも知れない。
入社2年目の新米社員の可能性もあれば、来月契約を打ち切ることを決めて居る臨時アルバイトであることも十分考えられる。
彼ら「部下」が貴方の目を盗んで勝手に新入社員を退職に追い込んでいる。
そして、それらを正当化する台詞を貴方はこれまで何度も耳にして来た筈である。
「あの新人は使い物になりませんでした」
↑ と。
仮に今まで、ここまで露骨な危険信号を見逃していたとしたら、人手不足は100%貴方の責任である。
本来、人事権は給与を支払っている貴方のみが保有しているというのに。
利害相反
従業員は経営者の敵ではないが、従業員は従業員の敵である。
何故なら、労使間よりも従業員同士の方が利害相反する箇所が大きいからである。
まず、如何なる事業であっても、必要とされる人手には上限がある。
椅子の数が決まっている以上、座らせる人間の質は少しでも高い方が良い。
各種の法令を無視して構わないのであれば、経営者は従業員をどんどん上位互換に入れ替えた方が得に決まっている。
よって、これは構造の問題なのだが。
全ての従業員にとって新参者は利害が相反する存在である。
特に恐ろしいのは、「後から入った者の方が自分より優れている」ケースである。
新参者が自分より優秀であれば、己の存在意義そのものを揺るがしかねないからである。
(経済効率を突き詰めれば、優秀な新人が入ったのなら劣った古参を切る方向に話が進む。)
貴方の従業員は本能でそれを知っているから、あの手この手で妨害工作を行って、新参者がパフォーマンスを発揮できない様に仕組む。
念を押しておくが、従業員に罪はない。
何もかも貴方が悪いのである。
もしも、このエントリーで述べた構造を今初めて知ったのであれば、その無思慮を庇うことは困難であるし
反対に、このエントリーで述べた構造を既に知っていたのであれば、その無為には弁護の余地がない。
人間は泥棒である
人間は泥棒である。
よって、ネグラから一歩出れば、盗めるものがないかを必死で探し始める。
(責めてはならない。 この卑しい本能こそが、人類を地球の支配者の座に押し上げた。)
企業には多くの財物が在るので、本当は皆自分の職場の財物を略奪したいのだが、そこら辺は社会が対応策を充実させている。
カネが盗めないので、仕方なく人間は勤め先の権威と部下の尊厳を盗む。
例を挙げよう。
人事権も無いのに「オマエはクビだ!」とか「この会社にキミは要らない!」を連呼する賃金労働者が居る。
彼は「人事権を僭称」することによって、会社の権威を盗んだ上で、立場の弱い相手を委縮させて尊厳を盗もうとしているのである。
言うまでもなく、彼の様な賃金労働者が労使間に1人存在するだけで、職場は労働者を確保出来なくなる。
部下に新人教育をさせるのは常軌を逸している。
それは、愛人の救助を妻に任せる程の愚行である。
くれぐれも忘れないで欲しい。
新人を戦力化したいのは貴方だけで、貴方以外の全員はその事態を恐れている。
自分の無能が発覚するからである。
自分の不要性が露呈するからである。
彼らが今の待遇を守る為には、「後から入って来た者が無能でとても使えない」と貴方に錯覚させるしかない。
よって彼らは、ただ新人を機能させないことだけに全身全霊を尽くす。
当然の帰結として、新人は無能の讒言を真に受ける無能経営者の元を去る。
それが貴方の会社に従業員が定着しない理由である。
大体、今まで貴方は何の疑問も抱かなかったのか?
新しい従業員が全員逃げるような苛酷な職場で、古参がのうのうと居座っているのであれば
その原因は全て居座っている古参以外にはない。
対策
古参も新人も同じ賃金労働者に過ぎないことを徹底させること。
先輩後輩システムは無能の為の福祉に過ぎない、ということを貴方が自覚して、その福祉を濫用させないように仕向けること。
対して大きくもない組織で、形式的なピラミッドを築かせないこと。
命令権・人事権が自分のみに帰する事を主張し続け、部下の越権を絶対に許さないこと。
尊厳も通貨である。
人間は愚かなので(或いは、愚かな人間は)、立場の弱い人間の尊厳を盗むことで自尊心を満たそうとする。
それを真面目に阻止していれば、自然に従業員の定着率はあがるだろう。
雇用情勢
古い時代が去り、誰でも起業できる時代になった。
よって優秀な若者は全員自分のビジネスを保有している。
従って、労働市場に優秀な若者は残っていない。
奇跡的に巡り合えたとしても、彼が優秀であればある程、永く居ることはないだろう。
少なくとも、底辺の知る優秀な若者は全員が何らかのビジネスを保有し、当面の生活に困らない程度のキャッシュは獲得済である。
二番目に優秀な層は、現在進行形で自分のビジネスを構築する準備をしている。
そして、彼らの中に無能な老人に対しての寛容を持つ者は一人も居ない。
その事実だけは真剣に受け止めて欲しい。
人材が必要であれば相応の対応をするべきであるし、中間に位置取りしようとする邪魔者を厳しく掣肘しなければならない。
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従業員の敵は従業員!
とても新鮮な意見で驚きました。
私は企業に勤めていませんが、組織と関わる時はそのことを頭に入れて付き合うことにします。
2018年3月18日 8:53 PM | ハンタ |
大変勉強になりました。
本当に、何社も渡り歩きましたが、古株が偉そうな職場ほど、新人の定着率が悪かったです。
会社としても、仕事量には波があるし、このようなリスクを回避するためにも、常に従業員を抱えるのではなく、必要な人材を高給スポット契約で雇う方が割がいいんじゃないかと思います。
2018年3月18日 9:27 PM | しげる |
いつも大変興味深く拝読させて頂いております。Tadaと申します。コメントは初ですので、軽く自己紹介させてください。
現在私は、会計系アドバイザリーファームで働いております(まだ下っ端ですが)。主に企業の再生コンサルをやっています。
元々、底辺さんのブログは明智光秀の記事から知りました。初期のものも含めてマネーハック系以外はほとんど拝読しています。
底辺さんの歴史や古典からの洞察が大変鋭いと感じ、私もそれに倣い、再び本棚から『韓非子』や『史記』などを取り出し読み直している次第です。
さて、今回の記事に関してですが、確かにあるあるですね。こういったエネルギーが内部の権力闘争に向けられ、若手を潰しにかかる会社にはいくつか特徴があるように感じます。
①業界自体が成熟しており、成長環境に乏しい(=パイ自体が拡大していない)。
②評価システムが成果志向ではない(管理職が数字を上げることにコミットしていない)。
従って、人事権を集権化するよりも、新規事業開発に若手を投入したり、人事制度を成果志向に転換したりして、社内のエネルギーを外に向けるような施策を打つのが良いのかなと思います。
底辺さんはどのように考えますか?
ちなみに全く別件なのですが、2014年9月18日付の記事の囚人のジレンマの利得表ですが、あの利得表だと互いが裏切ることで互いに不利益となるナッシュ均衡が成立しないと思うのですが…(あれだと双方が裏切ることで最大利得を享受してしまいます)。
2018年3月19日 4:26 AM | Tada |
ハンタ様へ
あくまで極論ですが、経営サイドにこの観点での警戒心を持って欲しかったので。
外部から組織と関わる時の参考になれば嬉しいです。
2018年3月19日 8:30 AM | teihen |
しげる様
多くの職場を見聞された方は、皆様しげる様と同様の御意見をお持ちですね。
スポット雇用はこれから更に増えるでしょう。
ただ、スポットで雇いたいような優秀な人材ほど他の経営者が抱え込もうとするので、巡り合うのは難しいかも知れません。
2018年3月19日 8:33 AM | teihen |
Tada様へ
いつも、目を通して頂いてありがとうございます。
これからも頑張って恥を晒して行こうと思っております。
若手潰し防止の話ですが、その企業の経営が資本家によってなされているか労働者の専横によるものかで、アプローチは変わって来ると思います。
(サラリーマンが昇格して経営層に加わるシステムの会社が社風を変えるには、改革者が志の欠如した同輩を排除する必要があります。)
成果主義に関しては権限を持つ者に対して厳格であるのなら賛成です。
>新規事業開発に若手を投入したり
従来頻繁に唱えられていることですが、発想法には反対です。
「若手」という言葉を使った時点で、そのチームに対して心理的マウントを取ろうとする古参心理が生まれるので。
「スキル保有者の選抜チーム」と定義付けた方が円滑に仕事が進むでしょう。
>ジレンマ表について。
御指摘感謝です。
拾い物の画像を頓着せずに(無断)使用しておりました。
己の愚かさの証として、当該記事に加筆しておきます。
2018年3月19日 8:53 AM | teihen |
エントリのタイトルを見た瞬間、
会社の将来性が問題なのかな?と思いましたが、
違っていて、
これはまったく気が付かなかった視点でした。
私が会社員として働いていたころ、
優秀な後輩が入ってきたら
自分が頑張らなくちゃと思っていて、
追い出すという発想なんてありませんでした。
確かに大企業でもなければ椅子の数は決まっていますし、
そうなると追い出しにインセンティブが働いてしまいますね。
いつか人を使うことを考えているので頭の中に入れておこうと思います。
2018年3月22日 2:37 AM | Smoto |
Smoto様へ
人間には2種類居ます。
優秀な隣人に備える為に、自分が錬磨する者と相手の足を引っ張る者です。
貴方は前者なのでしょう。
両者を峻別する事が組織活性化の秘訣なのでしょう。
2018年3月22日 9:01 AM | teihen |
今回の記事もありがとうございました。
ところで冒頭の曾子の絵と、今回の話のつながりを教えて頂きたいです。
よろしくお願いいたします。
2018年3月23日 7:36 PM | ヤス |
ヤス様へ
画像は孔子の弟子の曾参です。
曾参は親孝行の人格者として知られていましたが、同姓同名の犯罪者が人殺しの罪を犯してしまった為
母の友人が「貴方の息子が人殺しをした」と告げました。
母は最初は信じませんでしたが、3度目の噂を聞くと恐れて逃亡してしましました。
聖人の母でも噂を吹き込まれれば我が子を疑うのです。
古代中国の名将が出征する時にこの事例を挙げて、王が讒言で自分を疑う事を戒めた事例があります。
現代ビジネス現場でも、無辜の若手が曾参の様な不当な扱いを受ける機会が減ればいいと思っております。
2018年3月23日 9:09 PM | teihen |
203 :名無しさん@毎日が日曜日:2010/05/12(水) 00:13:00 ID:NTXQmlcT
いくら困り果ててても中小ブラックに手を出してはいかんのを思い知った。 自分も仕事見つからずしぶしぶ地元の中小企業に入ったが、
なにもかもがひどくて1カ月で辞めた。
労働環境も従業員の質もやっぱりひどい。大手とは雲泥の差がある。
新卒で入った大手企業がいかによかったかを思い知った。
親の看病でうつ病になり1年間療養するために退職したのが悔やまれる。
206 :名無しさん@毎日が日曜日:2010/05/12(水) 00:29:49
>>203
中小ブラックが酷いのは、賃金や福利厚生等の待遇だけじゃないんだよね。性根の腐ったハイエナのような人間がとにかく多い。
偏差値の低い学校にクズが集まるのと同じような感じ。
立場の弱い人間、何かしら弱みを持つ人間に喜び勇んで突っ掛かっていく古株がほぼ必ずいる。
ここの連中の大部分が就職してまず最初に悩まされるのは、
仕事を覚えることじゃなくて、この手の連中にどう対応するかということになると思う。
222 :名無しさん@毎日が日曜日:2010/05/12(水) 11:47:50
世の中ここまで性格悪い奴だらけとはね・・
まあ性格悪くないと勝てないのかもしれんが。。
おっとりしてるやつは食い物にされるだけ。
590 :名無しさん@毎日が日曜日:2010/05/22(土) 23:43:19
DQNのほうが就職しやすい気がする。
あいつらは適応能力だけはゴキブリ並にあるからなw
595 :名無しさん@毎日が日曜日:2010/05/23(日) 02:42:06
仕事仲間の悪口を言うDQNにはウンザリした
文句言ったもん勝ちみたいな職場もウンザリする
596 :名無しさん@毎日が日曜日:2010/05/23(日) 02:46:24
>>595
ウチの職場もそう
なんでそういうことを好むんだろうな
マジでうんざりする
597 :名無しさん@毎日が日曜日:2010/05/23(日) 03:12:24
>>595
そういう仕事場に限って誰でもできるような
仕事だったりする。こんな仕事で優劣つけてどうする
かねwレベル。
598 :名無しさん@毎日が日曜日:2010/05/23(日) 04:11:52
DQNは悪口とかストレートに言うんだよな
脳みそが本当幼稚園児並なんだよな
2018年4月3日 4:11 AM | Name * |
4:11様へ
人材を確保出来ている企業って大抵この逆の雰囲気ですから
やっぱり民度が全てなのでしょうか?
2018年4月3日 6:58 PM | teihen |
エントリーとは関係無いのですが(エントリーは楽しく読ませていただきました)、犬の首輪賞はまだ継続されているのでしょうか?
2018年4月24日 11:56 PM | Name * |
11:56様
企画そのものは終了したのですが
その趣旨で御応募頂ければ返信致します
2018年4月26日 8:38 AM | teihen |