専門家・自営業者・士業がコモディティ化市場から脱却する方法   


節操の無いタイトルをまずは詫びる。

 

 

コモディティ化について

 

商品・サービスが差別化特性を喪失する事により低価格化する事をコモディティ化と呼ぶ。

「商品・サービスが安くなるのなら大歓迎ではないか。」と考える方もおられるだろう。

だが残念ながら、今一番値崩れしているのは『労働力』と云う名の商品・サービスである。

貴方の賃金が下がったり働き口が減っているのも、貴方の保有する『労働力』と云う商品・サービスが大きく値を崩しているからである。

 

強引に犯人捜しをするなら、この現象の原因はインターネットの普及。

所謂IT革命によって、労働市場の在り方が劇的に変化した事が原因である。

 

ここまでの話は、弊ブログの中で執拗に繰り返して来た。

(農業革命→産業革命→IT革命の流れに関しては、多くの識者が解説してくれている)

貴方が内心辟易している事も知っている。

 

今回のエントリーでは、話を一歩進める。

『どうすれば特別な才能を持たない普通人個々がコモディティ化から逃れ得るか?』

について実例を挙げながら、掘り下げて語ってみるつもりである。

 

 

 

ある翻訳家の成功

 

先日、とある翻訳家の方(以後M氏と呼称する)と会食させて頂いた。

 

翻訳家と言えばIT革命で最もワリを喰ってると言われている業種である。

(今、このエントリーを執筆している瞬間にも、グーグルが全世界から選抜した英才たちが全自動翻訳プログラムを開発中である。)

事実、食えなくなっている人間は多い。

相場そのものが値崩れしているので、一線級の翻訳家でも売上単価が落ちている。

 

なので底辺は、M氏に業界の詳しい事情を聞かせて頂く事を目的にしていた。

当日、M氏と数分話すうちに彼の事務所が業界内で上手く行っている事に気付く。

あきらかに、利潤のある仕事を確保出来ている様子だった。

 

経歴を聞く限りM氏の経歴は業界トップと見做し得るものではない。

彼はメーカー勤務時代に翻訳業務を行ったり、学習塾を起業していたりして、専業の通訳者としての経歴は恐ろしく短かった。

留学経験はあるものの、ハーフではない。

それでも何故、上手く商売が回ってるのかと言えば、彼が集客に成功しているからである。

 

そして、「どの様に集客しているのか?」と言えば、この様な会食行為を繰り返す事が秘訣の一つであった。

何せ底辺如きに時間を割いているのである。

M氏が如何に人間の縁を大切にする人物であるかが伺える。

人と逢う為のお茶代を年間数十万円使っているというからかなりのものである。

(使おうと思って使える桁のお茶代ではない。)

 

彼の集客は、この様なリアル交遊が起点となり、発注・紹介に繋がっていた。

かくいう底辺も近所の人間から翻訳家の紹介を頼まれれば、まずはM氏の名を挙げるだろう。

何故なら、実在を確認済みの上に実物の精査が終了しているからである。

 

これが個人がコモディティ化しない為の、優れたアプローチの一つである。

M氏がそこまで考えているか否かは解らないが、会食経験に優る『キャラクター戦略』などない。

(代議士屋は大昔から実践している)

 

彼に関しては、まず食いっぱぐれがないだろう。

そして、この考え方は他のコモディティ化しがちな業界でも応用可能である。

 

 

 

M氏の行動を『戦術』として勝手に分析してみる

 

 

【分母を増やす】

 

M氏と底辺は、ある交流会で出逢った。

そこで頂いた名刺に御礼メールを送ると『一度ゆっくりお話がしたい』と云う旨の返信があったので、会食の約束をした。

食事中に『他の方とは何人くらい逢われましたか?』と尋ねられたので、底辺以外の人間とも積極交流を図っていたのだろう。

これらの行動を鑑みれば、

M氏が接触数の分母をコツコツ増やしている

事が理解出来る。

 

分母が大きいので底辺の様なハズレを引く事もあるだろうが、下限を知る事は損失ではない筈である。

 

 

【身なり物腰に優るブランディング無し】

 

 

底辺は野球選手が着るような黒タートルにラフなジャケットを羽織っただけの服装だった。

一方、

M氏は言うまでも無くフォーマルなスーツ姿で現れた。

時計も上品な高級品を付けていた。

勿論、底辺は時計の相場を知らないが。

重要な点は、フォーマルな記号足り得ているか否かである。

M氏は自身がフォーマルな場にでも連れていける人材である事を、自身の日頃の身なりで証明しているのである。

話を聞くと、『メーカーの営業に同行して世界各国に赴いている』、と云う事だった。

つまり、彼は組織人から見て『同行させて差支えの無い外部人材』なのである。

一回の会食で、実物の彼のフォーマル度(そんな単語は存在しない)が一定レベルである事は証明される。

それがオンライン上に存在する無数の通訳との決定的な差別化となっている。

 

 

昨今のフリーランスにはこの視点が欠落している人間が多いと底辺は考える。

組織適性が無い事が問題ではない、組織適性を持ち合わせて居ない癖に『BtoB集客が出来ない』、と悩んでいる事が問題なのである。

組織人は、自身が所属するレベルに達してない人間を使わない。

 

 

 

【身の上話の効用】

 

M氏は最初から身の上話をしてきた。

出身地や家族や経歴、挫折や転換点についてである。

念の為、タイミングをずらして異なる角度から幾つかの質問をしてみたが、話には全く矛盾は無かった。

恐らく作ったストーリーではない。

 

人と話慣れているM氏なので、『緊張して思わず深く語ってしまった』と云う事はない。

彼にとっては基本的なファーストコンタクト方法なのだろう。

 

M氏が何故この様な切り口で接するのだろうか?

考えると理由は2つ。

 

1、相手の返報性を計れる。

 

他者から施しを受けた場合、報恩を考えてしまう心理を『返報性』と呼ぶが、

やり方次第では、用いる物が自己紹介であっても、ある程度はその強弱を測定できる。

あまり本意では無かったが、底辺も幾つか手の内を明かした。

 

2、二度手間防止

 

自己紹介の為に二回も時間を割くのは損失である。

勿論、M氏は一度で済ませて来た。 

よって、我々の次のコンタクトは商談のみとなる。

 

M氏が意識してその様に振る舞っているか否かは不明。

ただ結果としてコストパフォーマンスの良い行動をとっている。

 

 

敢て即物的な考え方をするならば、会食の目的は相手の見極めとビジネスチャンスの獲得である。

(M氏は敢てそこまで思考化していない筈である。 少なくとも顔には出ていなかった。)

この観点から見れば、以上3つの『戦術』は目的に最適化されている様に感じた。

 

 

 

まとめ

 

「実際に逢う」

ただそれだけの事でも、この様な差別化は可能である。

勿論、実物が無価値ならば誰とも顔を合わさない方が賢明なのだが。

だが、人前にリアルなキャラクターを晒す事が出来る、と云うのは大きな差別化要因である。

コモディティ化から脱却する最も明確な方法の一つは、パーソナルな部分をある程度前面に出していく事である。

(ネットに個人情報を晒せ、と云う意味ではない。)

 

 

コモディティ化したビジネスでは些細な差別化が競合者と大きな差を付ける。

最後にもう一度繰り返すが。

「逢った事がある。」

と云う事実も立派な差別化要因である。

 

「一見平凡な手法であっても、真面目にやれば幾らでも武器化可能なのである。」

 

どうか頭の片隅に留めておいて欲しい。

 


 

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12件のコメント

  1. 多那

    営業能力に優れた方なんですね。お茶代年間数十万と言うことは100-200人位と合ってるのかな?
    私は初対面の人と世間話するのが苦手なので、私にはM氏が超越者に見えますw

  2. teihen

    多那様

    ただ、M氏は生まれながらのコミュ力特化タイプではなく、数をこなす事でレベルを向上させたタイプの方、と云う印象を受けました。
    よく「数が質に転化する」と言いますが、その好例を目の当たりにした心境です。

  3. Y.T

    有用な事例、ありがとうございます。
    組織がフリーランスを使うくだりは、組織内から見てまさしくでした。
    逆に、弱い組織に一段上のスキルを売り込むといのもアリかなーと思います。

    それと、喋れば地雷のポンコツ人間としては、真逆の事例も聞いてみたいです。極力、対面営業を避けた脱コモディティですかね。
    機会がありましたら、ぜひお願いします。

  4. やす

    今回のお話もありがとうございました。
    以前底辺氏は
    < 商売に接待も人脈も歓待も交流も友情も全て不要
    という主題のことを書かれていましたが、このような案件(コモディティ化市場)では
    <接待や人脈や歓待や交流や友情を強いられるビジネス
    ということになるのでしょうか。
    差し支えなければお教えください。

  5. teihen

    Y.T様へ

    対面営業を避けた脱コモディティを展開するコツは
    『自分はオンライン特化し過ぎていて対面能力が無い、心苦しく思う』
    と最初に予防線をしっかりと貼る事です。
    (但し、ネット上の受け答えを完璧にする必要があります)

    その場合。
    最悪、対面してしまった時に、「そこまで酷くないな」と思わせれば勝ちになります。
    即ち、如何にハードルを下げるか、ですね。



    やす様へ

    いや、M氏もそれらが副次的な要素に過ぎないと潜在的に解っているからこそ、一回で全ての要件を済ませているのでしょう。
    少なくと彼はオンラインだけでも十分にやっていける能力がある上に、プラスアルファとしてこの活動を行っていたので。

    接待や交流でコモディティ化から脱却する事の出来る人は大いに行えば良いと思います。
    (当然、逆効果になる人もいます)
    それらも含めて自分自身を分析・把握する事がビジネスの第一歩であると、私は考えます。

  6. 幸福賢者

    いくらエントリーシートが発達しようが、面接はなくならないということですか。
    商売人なら、常に面接されている認識を持たなければなりませんね。
    顔写真が猫なニートには、耳が痛い話です。

  7. teihen

    幸福賢者様

    これだけIT網が発達してしまったら、面接に辿り着くまでにログ・レビューチェックが厳重化するでしょう。
    (商売人も就業者も)
    故に、面接して貰う事すら貴重体験になっていくのではないでしょうか。

  8. 鷹九

    記事と関係ありませんが、以前に仰っていた国際化という相互脱税協定と言う意味が今回のニュースでこの事かと気付きました。

  9. teihen

    鷹九様

    大体、マスコミが「それが善であるとの前提で強引に推奨してくる事柄」の全ては悪徳です。
    故に、私は移民や死刑廃止に反対です。

  10. 鷹九

    同意見です。

    砂漠で水の取り合いしているようなものだとしみじみ感じました。

    IT革命とか少子高齢化とかその辺に意識が行ってましたが、そもそも水が堰き止められているのではと言う驚きといいますか…。

  11. teihen

    鷹九様へ

    せめてITをマシな世の中作りに使いましょう。



    幸福賢者様へ

    「この様な商売もある」と云う事を皆さんに広めていきたいと思います。

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