井原西鶴に学ぶ、元手も技能もない者が資産を築く方法


処女作が「好色一代男」である為に通俗作家のイメージが強い井原西鶴であるが。

ビジネス分析にも優れており、本邦初の経済小説である「日本永代蔵」を執筆している。

【参照記事】 世界の借屋大将藤市に学ぶブルーオーシャンの見つけ方

永代蔵に関しては上記URLで解説させて頂いた。

ここで京の藤市を紹介したのは、彼の戦術だけは現代でも通用するレベルで秀逸だったからである。

逆に言えば、それ以外の稿は見るべき箇所もそれなりにあるものの、藤市に比べれば数段劣る。

ただ、見劣りを理由に他を紹介しないのは怠慢なので、次点二人を紹介する。

 



 

 

北浜の老婆

 

名は残っていない。

北浜の水揚げ場で落ちている米粒を掃き集めて、その日暮らしをしている老女が居た。

(かつて大阪は、全国の年貢米の集積地だった。)

器量が良くなかったので、23歳で後家になってからは再婚も出来ずに、一人息子の成長だけを楽しみに生きていた。

 

ある年、諸国の年貢率が引き上げられて、大阪の備蓄米量も倍増したので、拾える米が増えた。

老女は一念発起し、今まで食べていた米を貯蓄に回した所1年に7石半も貯めることが出来た。

(1石は、現在の貨幣価値で2万円~3万円ほど)

息子には廃棄米俵を拾わせ、銭差し(穴あき銭貨を結ぶ紐)を作らせて両替屋や問屋に売らせた。

 

これを商売の元手として、息子は両替屋を開業した。

そして、母譲りの辛抱と才覚で瞬く間に大店と肩を並べるまでに身代を増やした。

母子の素性を悪罵する者も居たが、息子が大名屋敷に出入りするようになると、それも止んだ。

息子は豪商の娘と縁組し、大阪の名士となった。

大を成した後も、息子は母の箒を宝として大事にし続けたと言われる。

 

箸屋甚兵衛

 

江戸っ子の甚兵衛は40代までパッとしない人生を送っていたが。

一念発起し、近所の長者に金持ちになる方法を聞きに行った。

 

長者の言葉は

「早起き五両・家業二十両・夜業八両・倹約十両・達者七両の計五十両を配分して商え」

(早起き10%・本業集中40%・夜間延長16%・節約20%・健康維持14%が成功の為の意識配分比率という意味か?)

とのことであったので、半信半疑ながらも実践することにした。

最も江戸は数多の商売人が鎬を削っており、元手の無い甚兵衛に参入余地は無かった。

 

ある日、羽振りの良い大工連中を羨ましそうに見ていると、見習いの小僧が檜の木切れを道端に落として歩いているのを見つけた。

試しに後を追い、駿河町から神田までに落ちていた木切れを拾い集めて売ってみると、なんと250文もの大金を手に入れる事が出来た。

(250文は現在の貨幣価値で3000円もの大金である!)

「こんな儲け方もあるのか!」と感激した甚兵衛は、それから毎日夕方を狙って、大工の帰りを待ち伏せした。

どんなに調子の悪い日でも1200文以上の儲けがあったと云うから、もはや立派なビジネスである。

ゆとりの出来た甚兵衛であったが、この成功に油断することはなく。

雨で大工が通らない日は、木切れを削って箸を作り八百屋に卸し売った。

こうして、着実に富を増やした甚兵衛は箸どころか材木まで扱うようになり

大富豪となり米寿を迎えて、人々に尊敬されながら家名を残した。

 

 

両名から学ぶべきポイント

 

両替商になったとか、材木商になったとか蛇足である。

二人の成功者から学ぶべきポイントはそこではない。

学ぶべきは、「落ちているものを拾って売った」と云う点。

商売はランニングコスト以上の収益を上げれば、必ず黒字になるので、如何に初期投資を抑えるかが肝となる。

 

この二人は勤勉や節約があったから成功出来たのではない。

彼らは初期投資及びランニングコストの掛からないビジネスを選択したから、必然的にキャッシュが溜まったのだ。

 

両名の優れた点はまだある。

彼らは、「米」「木」と云う換金性の高い物を拾って、近所に売っていた。

(米は江戸期の基軸通貨である。)

要は、手元にキャッシュが届くまでの速度が速いのである。

手元にカネがあるから行動にゆとりも出来るし、その作業に専念出来る。

これは常時ドーパミンが分泌された状態で活動出来ることを意味する。

 

上記の条件にハマれば、余程の愚物でもない限り生活は向上する。

 

これが「元手も技能も無い者が資産を築く方法」である。

はっきり言おう。

底辺は『ゴミを漁って売れ』とあなたに言っている。

物の例えではない。

 

無論、我が国の刑法上。

遺失物等を横領することは禁じられている。

なので、底辺が云うゴミとは『売却可能なのに、その価値を誰も意識しておらず、かつ入手安易なもの』を指す。

 

それを発見する事が商売に他ならない。

以降のことは単なる作業である。

多くの人がその生涯を徒労に費やすのは、発見前の単なる苦役にリソースの全てを注ぎ込んでしまう事が原因であろう。

 

 

 

あなたは苦境にあるか?

もしそうであるなら、今為すべきことは断じて努力などではない。

あなたの急務は「発見すること」である。

 

持たざる者は、武器を手にする段階から始めねばならない。

武器とは生業である。

割のいい生業を発見せよ。

自力で見つける才覚が無いのであれば、甚兵衛がそうしたように賢者に問え。

答えが無ければ、次の賢者に問え。

 

あなたがせめて一代の勝利を獲得する事を願っている。

 


 

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10件のコメント

  1. やす

    今回の記事もありがとうございました。
    以前、永代蔵を取り上げた時に、本を購入して読みました。
    学生時代の古文の教科書に載っていたらよかったと思いつつ、今回の記事を見ていました。
    これからも生業、見つけていきたいと思います。

  2. teihen

    やす様へ

    実用古典も多いのですが、マニュアル系はどうしても陳腐化するので難しいですね。
    教科書は性質上どうしても無難なものしかチョイスされないので
    我々自身で実利性のあるものを発掘していきましょう。

  3. 1000$

    以前に挙げた雑誌拾いもこれにあたりますかね。
    最近驚いたのはメルカリで役所の書類が出てたことです。

  4. teihen

    1000$様

    雑誌拾いも近いですよね。
    割と売り先が確立されてる気がします。


    「メルカリで役所の書類を出品する」のは汚職ですが
    「メルカリで役所の書類が出品されている現状をニュースに纏めて儲ける」のは才覚です。

  5. 1000$

    ああ、そうか。情報も拾う対象物ですね。

    真に生き残るは一次情報を発信する者ですが
    私よようなパープリンでもなんとか川の上流にしがみつきたいもんです。

    …あ、発信するジャンルと媒体が流された!

  6. teihen

    1000$様へ

    ちゃんとオチまで付きましたね。

    補足ですが。
    レアリティの高い経験に関しては、必ずテキストの形で纏める癖を付けておいて下さい。
    整理された体験は立派な一次情報源です。

  7. Name *

    おっ久々の直球ですね。
    農家から藁を集めて他所に売って年収1000万。そんな感じの軽トラビジネスで成功した知人がいます。

    方々の話を聞いてつくづく思うのは、何がいらないかは聞いてみないとわからないということでした。事ゴミ拾い系ビジネスに関しては特に。
    誰かの「めんどくさい」は金になりますね。ありがたいことです。

  8. teihen

    5:02様へ

    古典だからこそ、即物的なテクニックを纏めてみました。
    「農家の藁」の話、素晴らしいですよね。
    まさに、『儲け話はどこにでもある』の典型です。

    お互い、これからもマメに生きて行きましょう。

  9. nyandan

    小学生の頃、海に近い所に住んでいたので、放課後と干潮のタイミングが合う時には、当時の1リットルのコーラ瓶を拾いに行っては酒屋に持って行って換金し、アイスを買ってたたことを思いだしました。

    自転車につめる量しか持って行けなかったのですが、とてもではないですが全部拾えなかったものです。

    その当時、そんなことをする暇があったら勉強しろとか、商売みたいなことするなと怒られてましたが、時代が変われば変わるものだとらつくづく感じます。

  10. teihen

    nyandan様

    幼き日のバフェット氏を連想させるエピソードですね。
    個人的な感想ですが、親が金儲けの話をしてくれる家の子供は
    成長してから裕福になり易い気がします。

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