「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」が重要な理由と、それを覆す手段


何故、「何を言ったか」よりも「誰が言ったか」が重要なのか?

 

理由は簡単である。

群れが全体の行動を決定する場合。

総員の意見を精査するよりも、第一人者の独断に委ねた方が意思決定速度が上がり、生存確率が高まるからである。

(だからこそ、群れは果断で賢明で経験豊富で冷徹なリーダーを産み出さなくてはならない。)

 

故に、集団内では

「どのような意見が適当か?」よりも「リーダー(若しくはそれに近しい存在)がどう判断するか?」

の方が重要視される。

群れの意思決定コストは低ければ低いほど良いのだ。

 

 

 

何故、有力者の愚論が無名者の正論よりも支持されてしまうのか?

 

群れの構成員個々の話も付け加える。

 

そもそも、人間個々にとっては、「群れがどうなるか」よりも、「群れ内における自身の政治的地位」の方が遥かに重要事である。

故に、人は群れの中の有力者の意見に従う。

有力者に賛同し、多数派に属した方が自分自身の利益になるからである。

強い者の発言に無条件で賛同することは生物としての自然の処世である。

その者の発言が余程、群れや構成員の不利益ではない限り、尊重される。

 

そもそも人間に、発言内容を精査し状況毎に的確な判断を行うだけの能力は備わっていない。

精査する能力を保有していない個体は、有力者に賛同することで、群れの意思決定コストを劇的に引き下げてくれている。

これも立派な貢献である。

 

群れが憎むのは、無力な提言屋である。

意見を通す影響力も地位も持っていない癖に、選択肢を勝手に増やす。

すると、意思決定コストと構成員個々のストレス値が増加してしまう。

この構造がある為に、「いい事を言ってる筈なのに忌避されてしまう」現象が発生する。

 

群れの存続の為に最も効率の良い方法は、リーダー適性を保有する個体に提案能力を保有する個体が思考を提供し続けることである。

つまりは。

理に適っているからこそ、ジョックが代議士をナードが役人を務めるケースが多いのである。

 

 

 

無力人の為の解決方法

 

「自分の意見は正しい筈なのに認められない」

「僕の言う通りにすれば社会は良くなるのに、どうして…」

等という悩みを抱えている人は、発信先を大衆ではなく、大衆への影響力を持った人間に絞ることを推奨する。

 

みんな(大衆)はあなたに何の価値も感じていない。

だから、あなたが大衆に発信する有効性は極めて乏しい。

それどころか、あなたが懸命になればなるほど、増加した判断コストを負わされてみんなが苦しむことになる。

 

その状況で群れを動かしたいと欲するのならば、思考の似た影響力保持者をリストアップして『献策』することが最善策である。

無論、献策者には影響力保持者を上回る知識量・論理展開能力・身辺の廉潔性・専門性の証明が必要とされる。

(当たり前である。 誰が自分より低能で意地汚い素人の意見に耳を傾けるものか。)

 

 

 

大久保利通から学ぶべきこと

 

維新の元勲、大久保利通。

この大久保が明治政府内において、ある意味専制的な立場であった事は周知の通りである。

上で述べた、「影響力保持者」の典型であろう。

 

勿論、最初から大久保は影響力を持っていた訳ではない。

大久保利通が世に出るのは、薩摩国父・島津久光の懐刀としてである。

当初、久光に大久保を用いるつもりはなかったが、大久保は久光の唯一の趣味である囲碁を猛勉強し久光への接近を図る。

(ちなみに、大久保にとってもこの時期覚えた囲碁だけが唯一の趣味となる。)

 

大久保は、久光の碁師である真海住職に弟子入りし、接点を探り始める。

ある日、真海住職から久光が「平田篤胤の著書・古志伝」の借用を求められた、と聞かされる。

すると大久保は真海に頼んで、その書籍に自身が記した意見書を挟んで貰う。

更には真海住職に頼み込み、久光との対局機会を作った。

これが切っ掛けで大久保は久光政権下の薩摩で出世ルートに乗る。

その後、維新時の薩摩藩政に大久保が強い影響力を及ぼしたのは言うまでもない。

 

これなどは献策者が影響力保持者を通して自分の意思を通した好例である。

無名時代の大久保が如何なる卓論を展開(何を言ったか)したとしても、世間はこれに耳を傾けなかったであろう。

但しこれが、薩摩国父・島津久光の発言だったとすれば話は別である。

雄藩・薩摩藩の公式発言(誰が言ったか)であれば、政敵でさえも何らかの回答を用意せざるを得ない。

例え、シナリオを書いたのが大久保だったとしてもである。

 

これが無名人が意見・企画を通す最短ルートである。

 

 

 

自身の正義を貫徹せんと欲するのであれば。

王の片腕となるか、自身が王とならねばならない。

大久保利通はその両方を務め、公事に尽力する中で斃れた。

私財を公費に投じていた為、その遺族には莫大な借金が遺された。

 

 


 

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25件のコメント

  1. 53∞

    理想論として逆の事を仰る方は多いですよね。
    「誰が言ったかよりも内容が大事だ。」と。
    匿名性のあるネット社会ではある意味そういう
    要素も出てくるのかもしれないですが・・・。

    現実社会では結局は群れの中での順位が
    結局は大切な事になってしまいますよね。
    (会社勤めの人は会社、バイト先、趣味のサークル…etc)

    私自身も幾つかの群れの中で良いポジションも
    悪いポジションも経験しましたけど、
    結局は小さな集まりだとポジション取りが
    全てではないかと思ってしまいます。
    一種の政治のようなものを感じますね!笑

    目的を達成する為に、強い者になる、
    なれなかったら強い者のサポートに徹する
    のも一つの生き方なのかもしれませんね。


    【以下エントリーと無関係な蛇足】
    そういえば、以前お話しした家業の傍ら、
    クラウドソーシングサービスでの内職
    を始めました。ちょっとした暇つぶしと、
    ネットでの発注や受注はどういったものか
    興味がありまして。

    時給にしたらワンコインくらいでしょうけど、
    意外にも少額ですがお金が発生して面白いです。

    こういったネット分野で強いのはやはり、
    Web制作やプログラミング、翻訳等ですかね?
    Webライティングだとどうしてもワンコインしか稼げず、
    何か効率が良い方法は無いかなと思ってしまいます。

    そもそも、こういった仲介サイトを介さずに
    ダイレクトに売り込めるくらいの能力や実績が
    あれば生きやすいのでしょうが。笑

    最近は興味がある事が色々出てきて
    ちょっと大変です。(良い意味で)

  2. 幸福賢者

    人間に的確な判断を行うだけの能力は備わっていない。
    KAKERU氏がプリティベルで述べていたことですね。
    何度も聞いているのに、なぜか忘れるんですよ。

    無駄なコストを増やしている無名とは、私のことですか。
    害悪とわかっても意見を発信して有力者を探すのと、無言でコストを下げるに専念するのと、どっちがマシでしょうか?

  3. 1000$

    「ニートが保有すべき資産~」以来の大久保トッシー再起用万歳。

    発言内容よりも発言者の権威づけにこそ意味がある。
    だから「群れ内における自身の政治的地位」を。

    昔ならゴルフですね。これが共通言語になる最後の世代が今の40代後半だと思うのでできる方には生かしてほしいですね。
    私?もっとうまくなってから練習します。
    次の接待XXはなんでしょうね。

    王かその右腕か、という役割分担は本質をついていて、リーダーかマネジャーかの2つに1つなんですよね。
    リーダーとして目標を提言するのか、マネジャーとして目標に橋をかけるのか。

  4. やす

    今回の記事もありがとうございました。
    少し前に「マウンティング」という言葉が流行りましたが、その序列に上がるためにも、戦略が必要なのですね。
    自分はできることなら、王のそばで戯言を言う道化師になりたいですね。

  5. teihen

    53∞様へ

    人間の目的はあくまで自己保存であって、群れは手段に過ぎませんから。
    それを踏まえない限り、建設的な社会運営は不可能事でしょう。

    内職、始められたのですね。
    素晴らしい行動だと思います。

    >こういったネット分野で強いのはやはり、
    >Web制作やプログラミング、翻訳等ですかね?

    私はキャラクター性を前面に出すことが可能な分野全般だと思っております。
    他の誰かに出来る仕事は値下げ合戦になってしまいますので。






    幸福賢者様へ

    群れに提言する者は、誰もがコスト生産者です。
    有力者が産み出したコストの方が消化効率が良いだけの話です。
    (まあ、その消化効率こそが群れの存亡を分けているのですけれど)

    >害悪とわかっても意見を発信して有力者を探すのと、無言でコストを下げるに専念するのと、どっちがマシでしょうか?

    論理性に磨きを掛けた上で、意見・提言からあなたのカラーを消すことです。






    1000$様へ

    日本で政治論を語る場合、大久保卿は外せませんからね。
    もっともっと、研究される偉人だと思っております。

    >次の接待XXはなんでしょうね。

    上司の好きなアニメに迎合することがビジネススキルになるでしょう。

    「あ、課長もグラスリップ好きなんですね。 私も大ファンなんです。 (今日帰ったら、全話チェックしなくちゃ!)」

    ↑ こんな糞みたいな未来を防ぐためにも、我々世代は意識して自重しましょう。




    やす様へ


    基本的には

    「そのコミュニティのリーダー(或いはリーダー的存在)は誰か?」
    「自分がコミュニティに提供できるものは何か?」

    の二項目を常に意識すれば、生存確率は上がると思います。


    >王のそばで戯言を言う道化師になりたいですね。

    これ、結構難しいですよ。
    一番コミュ力の必要なポジションだと思います。

  6. 朝間

    正しいことを言う→正しいことが通って影響力アップ
    ではなく、影響力→正しいことが通るということですね。
    ただ、前者も正しいことを通すのが目的ではなく、賛同者を得て影響力アップということのみを目的とするなら有効ですかね?

  7. teihen

    朝間様へ

    正義は人の数だけ存在します。
    故に「正しいこと」など所詮「自分に都合の良い正義」に過ぎません。
    群れやその構成員が欲しいのは「あなたの思う正しさ」ではなく「利益」です。
    その二つは峻別して下さい。

    1、何が群れの利益となるかを構成員個々から聞き取っておく
    2、最大公約数的な回答に対してのアイデア・知見を群れに提供し続ける

    この手順を踏んで主張を行っていれば、群れの中での影響力は増すでしょう。

  8. Name *

    ぼんやりとモンストのCMを思い出しました。
    信長とその家臣がモンストを通じて打ち解け合うという構成。正にあれですよね。

    接待ソシャゲを活用してる人は少なからずいるように感じますが、どうもスマホから離れられない点から公私混同促進剤に見えてなりません。
    上司「クエスト付き合えや」
    部活「Yes Sir!」
    上司「ところで今日の仕事の進捗は?」

    なんてLINEとかゲーム内メッセでバンバン飛んできたらエブリデイサザエさんシンドロームかと思われまして。
    そんなもんですか?接待って?怖い(>_<)

  9. teihen

    12:46様へ

    収奪的な傾向のある人間は公的立場を悪用して私的利益を満たそうとします。
    そういう人間を糾弾し社会から排除し続けることでのみ、労働者は解放されます。

    私的労役は律令時代から悪徳とされていました。
    社会全体の弱体化に繋がるからです。

    公私混同者を積極的に排斥して行かなければ、社会はどんどん苦しいものになります。

  10. pitok

    最近でも、ネット上で、「個人事業者は本を出してブランド力を高めよう」というアドバイスを見かけます。
    しかし、出版関係の仕事をしている知人によると、出版不況が続く中、誰でも本を出せる時代はとうに過ぎ去っており、説得力のある肩書きや目に見える実績を持つ人、誰もが知っている有名人など、売り上げが見込める著者でないと社内の企画会議を通らないそうです。
    読者は、「何が書いてあるか」より「誰が書いたか」で本を選ぶ傾向があるので、その観点から著者を選ぶことで、利潤を得られる確率を上げようという、出版社としては当然の戦略といえます。
    金に直結する分、底辺さんの指摘が一層わかりやすい形で表れていると思いました。

  11. teihen

    pitok様へ

    リーマンショックまではまだチャンスもあったらしいのですが、今は有名人でも企画会議で切られてるみたいですね。
    勿論出版は狙っていくとして、それ以外の効果的なアプローチを考えていきましょう。

  12. 山中 一人

    著名ブロガーの言う事なら、主婦の井戸端会議レベルの経済論でもそれなりの賛同を集めているのなんて正にそれなのですね。

    とは申せ、今さらカバン持ちなんぞして自由を失うのもバカらしいので、無価値なゴミをネットにばら撒いて自己満足する事にします。
    (最もド素人の自分はカバン持ちにすらなれないのですが・・・)

  13. teihen

    山中様へ

    ブログの世界に関しては、論旨が支持されれば賛同を集めるポジションに付けるのではないでしょうか?
    (他の世界に比べての話ですが)

    山中様であれば、カバン持ちにエネルギーを割くのではなく、意見の発信スタイルを洗練させていく方が建設的だと思います。

  14. 無農洋梨

    >無論、献策者には影響力保持者を上回る知識量・論理展開能力・身辺の廉潔性・専門性の証明が必要とされる。

    ここ、かなりハードルが高いです。。。

    >(当たり前である。 誰が自分より低能で意地汚い素人の意見に耳を傾けるものか。)

    誠にその通りでございます。。


    よーし、自分より有能ではない(と思う)影響力保持者を探して「献策」するぞ〜

    …(・ω・`*)(*´・ω・)…………い、いないッ!!


    「献策」の仕方や内容が大事ですよね。
    有能な大久保利通の足元にも及ばない無力人は、どのような戦略をとるべきか。

    影響力保持者の仕事に関連したもので、影響力保持者のあまり得意でない領域、あるいは馴染みのない分野で、自分の存在感を発揮することでしょうか。

  15. teihen

    無農洋梨様へ

    >有能な大久保利通の足元にも及ばない無力人は、どのような戦略をとるべきか。

    友人・知人を増やしてコネクターっぽいポジションを目指すことです。
    現代日本は薩摩藩と違って交遊の自由がありますので、十二分に活かしてみてみましょう。

    或いは、wikkiサイト運営者的な情報の整理者の地位を狙うのも建設的でしょう。

  16. Name *

    無能者の私はとりあえず上司の腰巾着イエスマンになります。

  17. teihen

    10:43様へ

    共同体秩序に積極参加することも能力の一つです。
    イエスマンの存在も確実に共同体を益しているので胸を張って下さい。

    御好運を祈ります。

  18. 矛盾

    たとえば、
    「進撃の巨人」で、
    エレンが初めて巨人化した時に、味方であるはずの兵士たちに恐れられ殺されそうになったところを、
    アルミンは「彼の巨人の力を使って人類の役に立てること」を提案しました。

    でも、一介の新人兵士にすぎないアルミンのいうことは聞いてもらえず、いよいよ撃ち殺されそうになったところを、
    偉い人のピクシス司令が通りかかり
    「ワシはあの者たちの話を聞いた方がよいと思うがの」
    という「司令の鶴の一声」で、
    エレン、アルミン、ミカサの三人は一命をとりとめます。

    その後、アルミンからピクシス司令に
    「エレンの巨人の力を使う方法」を提言したところ、
    その案が採用されて、多大な犠牲を出しながらも、
    壁に空いた穴をエレンの巨人の力で塞いだことで
    「人類がはじめて巨人に勝った」ことになりました。

    常識にとらわれない発想をするアルミンがいたからこそ、
    なし得たことですが、
    ピクシス司令の権限がなくては無理でした。

    そういうことだと私は理解しました。

  19. teihen

    幸福賢者様へ

    ブログ記事拝読させて頂きました。
    とても興味深く勉強になる文章でした。
    私の振る舞いのどれかが社会にとっての役割として機能していれば嬉しいです。

    お互い長くブログを続けていきましょうね。





    矛盾様へ

    権限を持った人は雑兵の突飛な発言を嫌うので(立場上そう振る舞わざるを得ない)、改革を望む人間こそ良き雑兵でありましょう。

  20. Name *

    エントリーの最後の一行について

    正論を通そうとするなら
    自分が一番ハラを痛めてリスクを背負う覚悟を持つことが条件である

    という意味にとれました。

    他人にリスクや手間や時間をとらせることを前提で
    「もっとこうした方がいいんじゃない?」
    と言うだけなら楽ですものね。

    ありがとうございました。

  21. teihen

    大久保卿に関しては誤解が多いので、それを解く一助とすべく記しました。
    当時から彼は、絶大な権力に比例して私財も莫大であっただろうと邪推されておりましたので。

    無論、権力を集金装置として悪用する輩はこの世に数多おります。
    だからこそ、そうでない者を顕彰することにより、社会の健全化を図っていきましょう。

  22. 大久保が福地桜痴に、上の信を得ること肝要である、分かっているのにそうしないのは才あって愚なことである、と語っています。極めて含蓄があります。
    清廉さで大久保甲東に比べるのもおこがましいですが、含雪山縣公をはじめ、凡そ褒められない昭和の陸軍軍人などの処世も、上の信を得るための指針としては、役に立つ気がします。
    そういう意味で歴史は役に立つ、というのが実感です。本当は豊臣秀吉みたく、自らの人生経験からの学びだけで気付きたかったのですが、自分のごとき凡愚には仕方ないですね。

  23. teihen

    あ様へ

    いや、自力で気づくのは誰にとっても困難です。
    (時間とエネルギーを浪費します。)

    私は史書、それも特に歴史解説書の良書を読み込むことが最も効率が良いと考えております。
    孫子などの漢籍などがその典型ですよね。

  24. Name *

    そこで、ブレインライティングっていうツールの出番ですよ。

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